CRAFTSMANSHIP / 山下の仕事

鏡で見ている自分と、人が正面から見ている自分。その両方を見て、整える。
創業者・山下雄也|YUYA
鏡越しだけで、終わらせない。
山下は、カットラインやフォルムを確認するとき、必ずお客様の正面に回る。鏡越しに見るだけでなく、直接その人を見て、バランスを確かめる。鏡の中では、左右が入れ替わって見える。鏡に映る自分と、人から正面に見られる自分では、印象が少し違う。だから、その両方を見て整える。それは、山下から受け継がれてきたDearBarberの仕事のひとつだ。
今回のクロスの刺繍は、その所作を形にしたもの。鏡の中では「DearBarber」が反対向きに見えるのに、その下の「2012」だけは正しく読める。2012をあえて反転させた、小さな遊びだ。
「なんでDearBarberだけ反対なん?」
そう聞いてもらえたら、こちらとしては「よし!」と思う。そこから、山下がなぜ正面に回るのかを話せる。お客様との会話のきっかけであり、受け継いできた仕事を忘れないための目印でもある。

掛けている時間も、気持ちよく。
刺繍は、僕たちが仕事を忘れないための目印。けれどクロスは、お客様が施術中ずっと身につけるものでもある。だから考えたのは、見た目だけではなく、掛けている時間そのものだった。
アパレルと同じように、生地から選ぶ。夏は涼しく、冬は暖かく。静電気を抑え、水をはじく機能はもちろん、首や肩に触れたときの柔らかさまで。
「これ、気持ちいいな」。
お客様からそう言ってもらえることが、何よりもうれしい。
切った髪が足元に落ちにくく、靴を汚しにくい大きさ。首元には、切った髪を残さないための小さなサインも入れた。見え方も、触れ方も、座っている時間も。クロス一枚まで、理容の仕事として考える。

文・川村弘樹
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