「何でもいいです。」本当に、そうなのか。

COLUMN

理容師は、何を整えているのか

お客様の髪を整えるTAKETO
TAKETO|四ツ橋店 ストアチーフ

髪型を選ぶ前に、その人の話を聞く。「お任せ」の一言の奥に、まだ言葉になっていない気持ちがあることも。TAKETOが覚えている、一人の話。

その方が、ずーっと鏡を見てるんです。「自分がこんなに変われると思わなかったです」って。その顔を見た時、めちゃくちゃ嬉しかったんですよ。

最初に来られた時は、「もう何でもいいです。髪型も何でもいいんで、お任せします。」という感じでした。でも本当に何でもいい人なのかな、と・・・。

仕事のこと、今までの髪型のこと。どうなりたいのか、誰にどう思われたいのか。話を聞いていくと、彼女が欲しい、出会いがない、という話をしてくれました。

「じゃあ、簡単な言葉で言うと、モテたいし、カッコよくなりたいってことですよね?」

僕自身もちょっと恥ずかしかったです。こんなこと言っていいんかなって。そしたら、その方が少し恥ずかしそうに「…ありがとうございます。そうです」って。「あ、引き出せた」と思いました。

そこから考えたのは、その人が今より少し自信を持てる髪型です。まず清潔感。でも、ただ短くするだけでは、その人が求めている「カッコいい」にはならない。

仕事でも違和感がなく、休日は少し遊べる。周りに「あれ、なんか雰囲気変わったな」と思われるくらい。その人が無理なく受け入れられる変化にしたかったんです。

家での乾かし方も、根元を起こすところから伝えました。スタイリング剤は、続けやすいDオイルを。「まず朝これだけやってください」というところまで簡単にする。

次に来られた時、「朝、できました」「会社で髪型変わったって言われました」と聞けたら、そこからまた微調整する。それも含めて、理容師の仕事だと思っています。

その日だけで、終わらせない。

家に帰って、自分でできる。次に来た時、また話を聞ける。その人の暮らしの中で、髪型を考え続けていく。

文・TAKETO

LOOK No.20 / 2026 AUTUMN & WINTER「成熟」より

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