COFFEE / カウンターで過ごす時間

「今日はコーヒー……いいよ。」と言わせていた。
忙しそうやな。次のお客さん、待ってるな。その気遣いに、甘えていたのかもしれません。
以前勤めていた店には、カウンターがありました。髪を切り終えてコーヒーを出すと、いろんな話が始まる。中には、髪を切らずにコーヒーだけ飲みに来る人もいて。「何しに来たんや」と思うこともありましたけどね。
特別に高級なコーヒーではありませんでした。でも、みんな少しくつろいで帰る。散髪屋って、髪を切りに来るだけの場所じゃないんやな。私はそこで、そんな店の姿を知りました。
DearBarberにカウンターを置いたのも、その時間が欲しかったからです。開店した頃は豆を挽き、目の前で淹れていました。でも、店が忙しくなるにつれ、ドリップからインスタントへ。そのうち「今日はコーヒー、いいよ」と言うお客様が増えたんです。淹れる一、二分にまで、気を遣わせていたんじゃないか。これは、あかんなと。
髪を切り終え、少し気が緩んだときに聞ける話があります。その人が何を面白がっていて、何を大事にしているのか。カウンター越しに、知らなかった一面に出会うこともある。店を見直した時、予約の取り方も変えました。詰めてきた枠に、一杯を飲んでもらう時間を、もう一度確保したんです。
せっかくなら、おいしいものを。豆屋さんにスペシャリティコーヒーを選んでもらい、季節によって豆を替えています。ただ、それをまだ伝えきれていないかもしれない。そこは私たちの宿題です。
今は持ち帰れる紙カップでお出ししています。「今日は急いでるねん」という日は、その先で飲んでもらえばいい。話したいからといって、引き止めたいわけではないんです(笑)。
店で飲む日も、持って帰る日も。
文・川村弘樹
一杯のコーヒーについて。
DearBarberでご用意しているのは、SHIZUKU COFFEE ROASTERのスペシャリティコーヒーです。豆の品質や、精製・焙煎・抽出の工程によって生まれる香りや風味を、気軽にお楽しみいただければと思います。
季節によって豆を替えています。店でゆっくり飲む日も、持ち帰って楽しむ日も、その時々の一杯をどうぞ。
LOOK No.20 / 2026 AUTUMN & WINTER「成熟」より
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